《MUMEI》 「‥あんた‥」 顔が、似てる。 ‥オレに。 似てるなんてもんじゃない。 まるで‥他人じゃねぇみてーな‥。 「──!?」 何も言わずに、女はオレを抱き締めた。 「なッ、おいテメッ‥放‥」 「‥ごめんなさい‥」 「‥‥‥は‥?」 何謝って‥、!? 【辛い目に遭わせてごめんなさい】 あの文字が、頭に浮かんだ。 「‥‥‥あんた‥オレの‥」 母親‥か‥? 「林檎‥」 女が、オレの名前を呼んだ。 ‥間違いない。 この女は、オレの‥。 「ごめんなさい‥、ごめんなさい‥」 「‥何で謝んだよ」 「ぇ‥」 女が、顔を上げた。 涙で潤んだ目が、オレを見つめる。 「あなたは‥私を‥」 「これっぽっちも恨んじゃいねーよ」 そう言ったら。 女はオレのホッペタを触って、また抱き締めてきた。 「──ありがとう‥林檎‥」 「泣くな、バカ‥」 何でどいつもコイツも泣きやがる‥。 アイツも‥この女も‥。 「‥なぁ」 「‥ぇ」 「名前」 「名‥前‥?」 「あんたの名前訊いてんだよ」 「──桃子」 「‥桃子、な」 「林檎──ほんとに‥」 「謝んな」 「───────」 前へ |次へ |
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