《MUMEI》
公園
初めて。
彼を見つけたのは、夏の公園だった。

彼は、大きな犬を連れていた。白い、気の弱そうな犬だった。
彼は、公園の真ん中にくると、犬の頭をなでた。
それから、小さなボールを取り出して、放り投げた。
白い犬は、一瞬ぼんやりとボールを眺めていた。
そして、今気付いたように、あわてて追いかけだす。
すべり台の上の少年が、小さく悲鳴をあげた。そのまわりにいた、少女たちはクスクス笑っている。可哀そうな少年は、犬をじっと見つめて動けないでいた。



彼は、けだるげに腰に手を当てた。半袖からのびる腕は、驚くほど白い。
何となく、心臓が悪いのかじゃないかと思った。
彼には、それくらい重い病が似合った。
顔は、俳優のウィリアム・ジスターに似ている。

もちろん、彼のほうが美しいけれど。

帰ってきた犬に、彼はまたボールを投げる。
走る犬。
笑う少女たち。
臆病な少年。
絵のような、永遠の時間。


私は、彼をウィリアムと名付けた。

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