《MUMEI》

そんな彼が、男を連れてきたのは、夏のさかりの頃。男は、ウィリアムよりも十ほど年上に見えた。

薄い色の髪、すらりとした長身。黒いスーツを着ていて、Tシャツにジーンズのウィリアムと並ぶと、少し異様だった。
顔だちは綺麗だけど、ウィリアムより男臭い。

ウィリアムは、天使みたいに綺麗だから。



男は、ウィリアムの横に静かに立っていた。ウィリアムは、いつもより落ち着きがない。
犬をなでながら、ウィリアムは男に、しきりと話しかけていた。
男は、ときおり微笑みながら、頷く。



ウィリアムが笑う。めずらしく、キラキラと笑う。
暖かく、優しく。

二人は、どういう関係なのか。
先輩と、後輩。
医者と、患者。
姉婿と、義弟。
どれも、きっと違う。彼らは、そんなものとは別だ。
けれど、確かなことは。



あぁ、私のウィリアムは、彼に恋しているのだ。
そして、男もウィリアムを愛しているのだ。



なぜか、私はひどく満たされた気持ちになった。

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