《MUMEI》

「なんだよ、使えねえな。おまえのが若いだろうに」
「若い奴がみんなパソコン使えると思うなよ」
「はいはいはい」
ユウゴは軽くケンイチをあしらいながら、織田に顔を向けた。
「あんたも使えないんだよな?」
「ああ。奴らの個人的な情報を集めるとなると、委員会のページに侵入しなければならないだろう。あいにく、俺にそんな知識はない」
「じゃ、ネットから探るのは無理か。何かでっかいイベントに出るってんなら、わかるかもしれないけど……」
ユウゴは言って、それはないだろうと首を振った。
あのプロジェクト関係者が何かの行事に出ていたことなど一度もない。
ユウゴが考えていると、ふいに織田が口を開いた。
「要は、奴らのスケジュールを知る者、あるいは知ることができる者がいればいいんだ」
「そりゃそうだけど、そんな奴いないだろ」
「おまえ、馬鹿だろ。いないんなら、捕まえればいいだけだ」
ケンイチが言うと、織田は「そうだな」と頷いた。
「誰を捕まえるんだよ?」
「そりゃ……」
ケンイチは答えかけて視線を織田に向ける。
「スケジュールを把握している者なら誰でもいい。そうだな、奴らの警護辺りでいいだろう」
たしかに、警護についている人間ならば対象のスケジュールは知っているだろう。
「わかった。一つずつ確実に動いていこう」
ユウゴが頷き言った時、ふいに玄関の辺りで物音がした。

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