《MUMEI》

「さっき俺が起きた時、お前──いなかったから」

「‥ぁ‥」





那加は、

俺が自分を捜していた事に、

やっと気付いたらしい。





「───────」

「悪かった、昨日は‥」

「いいよ、もう怒ってない」





照れたみたいに、

那加は俯いた。





「那加──何してたんだ‥?」

「散歩」





那加は、

ただ一言、

そう答えた。





「散歩‥?」

「朝早くなら、誰もいないし。誘おうかなって思ったんだけど‥日向、寝てたから」

「‥悪い」





俺が寝てたから、

那加は独りで散歩してたんだ‥。





「───────」

「ねぇ、一緒に歩こ?」

「ぇ」





俺とか‥?





「向こうにね、桜咲いてるの」





俺の返事を待たずに、

那加は俺を引っ張った。

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