《MUMEI》
なんて幸福
「ひいいぎゃぁぁ゛ぁ゛」


汚い悲鳴。
もう一度、ナイフを振り上げたところを、女に蹴りつけられる。
転んだ弾みに、ナイフを手放してしまう。


「何すんのよぉ゛!!クソヤロウ!!!」


女は、ナイフで私の腹を裂いた。
冷たい。
女の手を握る。
引き倒す。


「うがあ゛っっ!」


女の腹に、胸に、顔に、
ナイフを突き立てる。
汚い音。
汚い人間は、死ぬときも汚いのだろうか。



「ぅ゛・・・ぐぇ・・・」


女は、動かなくなる。
私も、隣にたおれる。
遠くで、悲鳴が聞こえる。


痛くない。
苦しくない。
私は、ウィリアムを守ったのだ。
この、悪魔から。



ああ、なんて幸福。
彼を守った。



「ふ、ふふ」



瞼が重くなる。
暖かい。
なんて幸福。

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