《MUMEI》
アルフレッド
「アルフレッド!!」



警察署から出てきた彼に、かけよる。辺りはもう、暗くなっていた。
アルフは、少し疲れたような顔をしている。それでも、黒い瞳で笑った。


「待っててくれたのか。」「当たり前だ。な、スタング。」


真っ白な犬のスタングは、アルフの足にすりよる。
その頭を、アルフはなでた。


「ありがとう、スタング。・・・リチャードも。」


はにかむような、笑顔が愛しい。
ゆっくり歩きながら、アルフにタバコを勧める。
アルフは、今年十五だが、タバコは俺より先に吸っていた。
頷きながら、彼はタバコをくわえる。


「・・・疲れた。」
「・・・死んだのは、サマンサだったか?」
「ああ、確かに。顔、ぐちゃぐちゃだったけどな。」

ま、もともと、ぐちゃぐちゃか。
そう言って、アルフは笑い声をあげる。


「例の公園で、死んでたんだって。」
「・・・犯人は?」
「隣で、腹刺されて死んでた。サマンサも、ただじゃやられなかったわけだ。」

アルフは息を吐く。煙が、空にのぼる。


「・・・ま、どっちにしろ、せいせいしたね。」


アルフの声は、本気でそう思っていた。


「まあ、あいつはお前にベッタリだったからな。」
「あー、気持ち悪!あの公園は、俺とリチャードのものだったのに!あの女、俺をつけてたんだぜ?・・・ったく、当分、あそこ行けないな。」


スタングが、そっと吠える。俺は、ネクタイを緩めた。


「ま、こんなスーツの男と、美少年がいたら、目立ってただろ。もう、あそこには行かねぇぞ。」


アルフの足が止まった。


「な、リチャード・・・」

こんな風にうつむく時は、決まってる。


「今日・・・仕事、しなくていい?」

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