《MUMEI》
君の名前その1
龍之介はあれから全力疾走で自身の住まうアパートまで駆け込み、
ドアを閉めて肩を大きく上下させて息をする。
「はぁ、はぁ…な、何やってんだ、僕は…」
自問してはみるものの、答えは即座には出てこない。
龍之介はクシャクシャと自分の頭を掻きむしり、靴を脱いでリビングへと向う。
ソファへと座り込み、あの時の出来事を思い浮かべる。
「(手、小さくて…少し冷たかったな)」
そんな事を思い浮かべる彼だが、すぐに首を横に振って雑念(ざつねん)を振り払う。
「ぼ、僕は何考えてんだ! あ、明日も学校だし、もう寝よう」
自分に言い聞かせるように、彼は声に出してそう呟くと、
いそいそとベッドへ潜り込み、そのまま瞳を閉じる。
しかし、瞳を閉じると思い浮かぶあの時の女の子。
「(どこに住んでるのかな)」
結局、龍之介は睡魔に意識を奪われるまでの数分間、
ずっとその女の子の事ばかりを考えていた。
「う、うぅん…」
翌朝、龍之介は珍しく早起きをした。
「あれ、まだ七時だ。早く起きちゃったな」
ベッドの横にある置時計を見ながら、龍之介はモソモソと
毛布の中から起き上がり、大きく伸びをした。
「う〜、さぶっ! エアコン、エアコン…」
両腕を抱える様にして擦りながら、龍之介はエアコンのリモコンを手に取り、
暖房に切り替えてスイッチをONにする。
少しボーッとしながら、朝のニュース番組を眺めつつ、
朝食を作り、ボサボサに乱れた髪の手入れをする。
「よし、完璧だ」
セッティングを終え、鏡の前でニッコリと笑う。
意外とナルシストなのかもしれない。
そんな一面を見せながら、焼き上がっているトーストを頬張り、
軽い朝食を済ませて、龍之介は大学へとで掛ける準備をした。
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