《MUMEI》 恥辱光は困り果てた。こんな窮地。どうしていいかわからない。 夜月が勝ち誇ったような笑顔で、バスタオルを光に渡した。 「武人の情けだ。体に巻きな」 光は悔しいけど受け取るしかなかった。 「優しいですね夜月さん」 小柄の眼鏡が高い声を出した。 「本村みたいなドSとは違うんだよ」 「よく言いますよ」 光はバスタオルを体に巻いた。 小柄な眼鏡が本村。逞しい体つきの小野寺。そして夜月。 あとの3人は全員オールバックで、黒のサングラスに黒のスーツと全く同じスタイル。 しかも一言も発しないで家来のように動いている。返って不気味だ。 夜月が迫る。 「光。お礼なしか?」 光は悪寒が走った。人間あまりにも悔しいと寒気を感じる。 「すいません」消え入るような声で言った。 「すいませんは謝りの言葉だろ。やり直し」 悔しい。 光は気が動転しそうだ。 「ありがとうございます」 光は頭を下げた。夜月は感激しきりだ。 「かわいい!」 小野寺が怖い顔で凄む。 「出ろよ」 光は仕方なく出た。バスタオル一枚の光はたまらなく魅惑的で、本村は思わずタオルを持って歩み寄った。 「お嬢さん、濡れた体を拭き拭きしましょう」 光は目にも止まらぬ速さでタオルを奪った。 「本村気をつけろ。この子格闘技やってるから」 「嘘」 「俺も2発で倒された」 「夜月さんが?」 本村は驚いたが、小野寺は自信があるのか光の真横に来た。 「格闘技ねえ?」 光は神妙にした。6対1で勝てるわけがない。 「おい、合い言葉。だれから聞いたんだよ?」 光は足がすくんだ。答えられるわけがない。 「そこのベッドに寝ろよ」小野寺が言った。 「嫌です」 「寝ろって言ってんだけど」 「じゃあ、条件があります」 「自分で条件言える立場だと思ってる?」 「思ってます」 光の答えに小野寺は睨んで威嚇したが、光はまばたきもしないで見返した。 「一応聞こうか」 「性的な拷問は、しないこと」 小野寺は面食らった。夜月が間に入り、光の腕を取った。 「大丈夫だよ光。そんなひどいことはしないよ」 ベッドまで歩く。光は慌てた。ベッドの上下にベルトが付いている。 光は逃げようとしたが例の3人が素早く光を押し倒し、両手両足をベルトに固定してしまった。 「ちょっと、ほどきなさいよ!」 大の字で無防備。光は恐怖に身が縮んだ。 「光。よくも顔を殴ってくれたね?」 光は横を向いた。 夜月が悪魔的に迫る。 「光。おまえに殴られてさあ。痛みが消えないんで病院行ったらさあ。顔の骨にひび入ってたんだよね」 光は唇を真一文字にして、神妙にしていた。 「このお返しはさあ。体で払ってもらうよ」 夜月がバスタオルに手をかける。光は身じろぎした。手足を拘束されているから、タオルを取られても手で隠すことすらできない。 光の怯える表情に満足したのか、夜月は言った。 「光。謝ったら許してあげるよ」 悔しいけど逆らえない。 「怪我をさせたことは謝ります。すいませんでした」 「かわいい!」 悔し過ぎる。 夜月は一人ではしゃいだ。 「聞いたか。今怪我させたこと限定で謝ったんだぞ。この状況でこの度胸。見習え本村」 「何で僕が?」 小野寺が口を挟んだ。 「で、合い言葉はだれに教わったんだ?」 光は黙った。夜月が脅す。 「答えないなら、すっぽんぽんだよ」 「タオルを取ったら舌を噛みます」 光が夜月を睨んだ。しかし本村が言った。 「夜月さん。濡れたタオルを巻くって、体に毒ですよね」 「いいところに気づいたねえ」 光は泣くのを堪えた。 「体も濡れてるから拭いてあげましょうよ」 いよいよ万事休すか。夜月が乾いたバスタオルを持ってきた。光の体に掛ける。 「優しい!」本村が高い声を出した。 「どさくさに紛れて触るなよ」 「はいはい」 結局乾いたバスタオルに取り替えただけで、裸を晒すのは免れた。 「……」 前へ |次へ |
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