《MUMEI》

「ぅぅ‥」

何か茨の道‥?

「どうした? 深刻な顔して──」

「ぁ、ううん‥」

「──お互いに好きなら、大丈夫だと思うよ」

「詠子さん?」

「大丈夫、私も協力するから。ね」

「ぁ‥ども‥」

詠子さんがそう言ってくれると──

結構心強いな。

「ありがとうございます、詠子さん」

「ふふ、お礼を言うのは私の方だよ」

「ぇ?」

「私も、千代子ちゃんにはお世話になったしね」

「お世話‥?」

「席、譲ってくれただろう?」

「──ぁ‥」

前に、

バスで席を譲った事──

詠子さん、

まだ覚えててくれてたんだ。

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