《MUMEI》

コトリ…



オレンジジュース、コーンスープと生野菜のサラダをおばさんが俺達の前に置いた。

「……」

「……」

すぐに立ち去るおばさん。
俺はそれを見た瞬間、



サッと血の気が引いた。



俺の方が大きいのに体を小さくして上目使いで聖ちゃんを見て
聖ちゃんはじっと俺の前にあるコーンスープと自分の前にあるコーンスープを見比べ……


「ほら、来るの遅いから同じ皿じゃなくなった!」
「へ?」
「まーこんだけ混んでたらしょうがないよな、……貢……」

「は!はひ!!」


「メリークリスマス」
最高に可愛いニッコリ笑顔。
ちょっと恥ずかしそうにオレンジジュースの入ったワイングラスを手に持ち俺に向けてくる。

「め、メリークリスマス…」

チンとグラスが心地良い音を鳴らす。


聖ちゃんはジュースを一口飲んだ後

「どうせならワイン飲も?ね?」

と言いながらスープを飲みだした。
「そ、そう…だね……」


俺は非常に、非常に、今日二度目の後悔…、いや、今までの人生の中で一番酷く激しく後悔した。


聖ちゃんの飲んでいるスープ皿……。



皿の周り一周、ニコニコした熊ちゃんが描かれ、途中カタカナでハッピィベアーと書かれている。


……つい、つい、
聖ちゃんの事を小学生にして予約してしまった訳で。


まさか料理は一緒だろうと当たり前の様に考えていたもんだから……


生野菜のサラダのてっぺんに俺のには生ハム。
聖ちゃんのにはハム太郎のかまぼこ。



周りを見渡すとカップルだけで家族がいない、どっかに子供がいれば事前に心の準備が出来たのだけどそれは不可能の様だ。

すると聖ちゃんはテーブルにあった飲み物のメニュー表を見だした。



「聖ちゃん、わ、ワインはさ、部屋で飲もう?ほら、遅くなってて悪いからさ」
小学生が酒飲んでたらまずい。俺は早口で言った。
「あ、…そうだな、うん……わかった」

聖ちゃんは素直にメニュー表をスタンドに差し込んだ。




−−−どうする!




俺!!

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