《MUMEI》

でも、

ただ席を譲っただけ──

なのにな。

それも、

あれっきり満員だったりする事はほとんどなかったら‥

あたしが詠子さんに何かしてあげられた事はは、

数える位でしかない。

それでも詠子さんは、

あたしに何回もお礼を言ってくれる。

何か、

凄いな‥

って思う。

あたしも、

見習わなくちゃだな──。

「千代子ちゃん?」

「ぁ‥、すいませんボケッとしてました」

お茶、

冷めちゃってるし‥。

「気にしないで、今新しいのを淹れてあげるから」

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