《MUMEI》
言葉責め
一方、完練英雄は。
柔道家に服を掴まれ一回転。柔道をやっている人間は、柔道未経験の男なら、掴んだ瞬間に投げてしまう。
完練はプロレス流の受け身で耐えた。気をつけるべきは柔道の締め技だ。裸締めや袖車が入ったら、まず助からない。
柔道家がにじり寄る。完練はカウンターの頭突き!
「NO!」
柔道にない技で勝負するのはセオリーだ。柔道は打撃に弱い。
入ってくればカウンターの頭突き。柔道家が慎重になる。完練は反撃開始。右ローキックから左ミドルキック!
怯んだ。高速片足タックル。柔道家は粘る。足腰はさすがに強い。強引に首投げに行く。しかし完練がひねりを加えたバックドロップ!
決まった。柔道家が慌てて立ち上がるところを顔面ハイキック!
完全KOだ。
「光!」
完練が急ぐ。だが3人目がいた。
髪の薄い金髪の白人が冷徹な表情で現れた。
「そこをどけ」
「NO」
「ボクシングに柔道。今度は何だ?」
「ミクスドマーシャルアーツ」
完練は身構えた。
「総合格闘技…」
「YES」
完練は人差し指を突き出した。
「プロレスが本来の総合格闘技だということを教えてやる。ちなみに貴様の格闘ベースは何だ?」
「ジュードー。コマンドサンボ」
「コマンドサンボ?」
完練は警戒した。今までの二人とは明らかに違う。
「あなたのベースは?」
「格闘プロフェッショナルレスリングだ!」
「レスリング?」
「アマレスじゃないぜ。プロレスだ」
男は数秒完練の体を見た。
「プロレス…UWF?」
「Uとも違う。魅せる格闘プロレス。ストロングスタイルだ」
男は聞いたことないというジェスチャー。
両者拳を構えた。
「レスラーは、打撃に弱い」
男が猛烈に左右のパンチ攻撃。ここで怯んではいけない。完練は右の突きを決めた。
男が下がる。完練は笑いながら言った。
「悪い。言い忘れたがクンフーもかじった」
男は唇に指を当て、出血の有無を確かめるポーズ。
完練も強敵とのファイトに専念した。光は心配だが、この用心棒に勝つ以外に道はない。
一方、光は。
ベッドの上で手足を拘束されて、6人の男たちに囲まれては、強気に出れるわけがない。しかも一糸纏わぬ姿だ。かろうじてバスタオルを体に掛けられ、恥ずかしい部分は隠されているが、いつ取られてしまうかという恐怖に、光はただ神妙にしていた。
夜月が笑顔で聞く。
「光。合い言葉を知っているのはごく僅かなんだ。だれから聞いた?」
光は無言。また本村が口を挟む。
「夜月さん。早く拷問しましょうよ」
「本村だったらどうやって拷問する?」
「ドリルマッサージですね」
「ドリルマッサージは残酷だろう!」夜月は嬉しそうだ。
こんなやりとりは、光にとっては恐怖でしかない。
夜月は枕もとにいて光の顔を覗く。
「光。ドリルマッサージって知ってる?」
光は横を向くと、小さな声で答えた。
「知りません」
「本村、見せてやりな」
「ジャーン!」
本村はモデルガンのようなものを手に持っている。先端には無数のトゲトゲ。
スイッチを入れた。ドリルのような激しさで先端がピストン運動を始めた。
光はすました顔をしていたが、内心は胸のドキドキが止まらない。
本村は光の下半身に近づけた。光は身じろぎする。
「光チャン。合い言葉はだれに教わったのかなあ?」
光は唇を噛んだ。
(どうしよう…)
夜月が迫る。
「言いな。これで攻められたらイっちゃうよ。やだろ?」
大ピンチだ。しかし、何を思ったか夜月が言った。
「本村。やっぱりプライドの高い光にドリルマッサージは残酷過ぎるから、やめよう」
「何言ってるんですか夜月さん」本村は呆れた。
小野寺も口を挟む。
「俺なら1分で吐かしてみせますよ」
「殴ったり乱暴なことは嫌いなんだ。本村。もっとスマートなヤツない?」
「スマートなヤツ?」
光は唇を真一文字にして、身構えるしかなかった。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫