《MUMEI》
大志さんの秘密
「昔だったら祐也位一人で運べたのに」

「もう、年だね」


(…はい?)


部屋に入ってすぐの果穂さんと大志さんの言葉に


俺は、自分の耳を疑った。


「…年には勝てないわよね」

「普通にね…って、信じてないね、田中君」

「……」


苦笑する大志さんに、俺は何も言えなかった。


(だってこの二人普通じゃないし)


「ひど〜い、祐希は部屋を見てすぐに納得してくれたのに」


(…部屋って…)


俺の目には、ただの広い部屋にしか見えなかった。


「まぁ、彼はプロだから」


そして、大志さんは


この部屋には至る所に手すりがある事


段差が無い、バリアフリーである事


風呂とトイレは別々で


トイレは、車椅子でも使用出来る事


風呂は、浴槽の縁が普通より幅広くなっていて、一旦そこに座ってから入れる事


背もたれ付きのシャワーチェアーと呼ばれる椅子に座って体を洗っている事


ベッドがリクライニング式で


リモコンで高さも変えられる事


等々…


を、教えてくれた。


「つまりね、そうしなきゃいけないほど、体が徐々に弱ってるんだ。特に、俺がね」

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