《MUMEI》
屋代さんにした話
『情けない話だけどね』


そう言って、大志さんは苦笑した。


「私だって、…そうなるわよ。

子供達の前では頑張っちゃうけど」

「志穂にはバレてるだろうけどね」

「そうね。出発時間ギリギリにしたり、途中で帰ったりしてれば、…ね」


(そうか、だから…)


二人に合わせていたから、いつものような早朝訪問が無かったのかと、俺は納得した。


「もしかして、屋代さんが今年から参加って、…介護が関係してます?」

「ギブアンドテイクね」


そして、果穂さんは


実の家族にも、ゲイである事を隠している屋代さんに


自分でいられる、自分を認める場所を与える代わりに


自分と大志さんのフォローを


いずれは、介護をしてほしいと頼んだと話してくれた。


「居場所を与えるという意味では、祐也も一緒よ」

「俺は…」


俺は、屋代さんとは、違う。


全てを、皆に話すつもりは、…


その、勇気は今は無い。


「君が、ここが居心地がいいなら、それでいいんだよ」


『今のままでいいんだよ』


そう、大志さんに言われた気がした。

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