《MUMEI》
俺への頼み事
「それでね、祐也!」

「は、ハイ?」


(びっくりした)


急に果穂さんは、いつものテンションに戻った。


「何事も、ギブアンドテイク、…よね?」

「…俺に、何を?」

「もっちろん! 祐のフォローよ!」


果穂さんは、俺に向かってニッコリ微笑んだ。


(やっぱり、それか…)


「そんなに大変じゃないよ。俺がやってた事だし」


(いやいや、十分大変ですから…)


大志さんは自分の価値を過小評価している。


(そういうとこ、志穂さんと似てるよな)


さすが親子だと思った。


俺がちらっと聞いた大志さんの仕事


それは、普通の事務全般ではなく


海外研修時の付き添い、通訳


最近増えた外国人労働者への日本語指導


そして…


現在社長の秀さんの行動チェック


大志さんは、ある意味


高山家の、影の支配者だった。


(そのわりに、無欲だし…)


俺が、大志さんを見つめていると…


「田中君ならきっと大丈夫だよ」

「や、無理…」

「志穂も認めてるし!」

「…」


(結局そこか!?)


「とりあえず、…保護者に、忍に相談してから決めます」


俺は、それだけ言って部屋を出た。

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