《MUMEI》 先生、 何かいないんですけど。 「シロ〜?」 あたし置いてどこ行っちゃった訳‥? 「おーい、こっちこっち」 「?」 ‥いた。 本棚の陰で見えなかっただけみたい‥。 「で──何してるの?」 「いやさ、ちょっといい物見つけてな」 得意げに言って、 先生はもう一冊本を抜き出した。 「これな、祖父ちゃんが好きだった本なんだ」 「お祖父さんが?」 「ぁぁ」 答えて、 先生はあたしに本を手渡してきた。 セピア色に色褪せた表紙。 タイトルが読み取れない位に、 使い込まれてる。 前へ |次へ |
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