《MUMEI》
気がつくと修平と会ったコンビニまで来ていた。
どれだけ俺は歩けば気がすむんだ…
玄関の鍵も閉めずに、二人歩いた道を無意識に……
違う。修平を求めてわざと辿ってしまったんだ。
財布もある訳なく俺はそのまま踵を返す。
「あの、!」
「……」
「すみません!」
俺に向かい走り寄る靴音。振り返るとコンビニの店員で。
「すみません、見えたから……、はあ、はあ……」
少し中腰になって息を整える店員。
「いつも深夜11時頃二人で買い物に来る方ですよね?今日も…あ、もう昨日か、はは…」
「は?俺が?……来てないけど……」
「…え?」
二人目線を合わせ、店員はじっと俺を見つめてだした。
しかしすぐに核心をもった様子で俺にボロボロの紙を差しだしてきた。
「これ、一緒にいた人が落としたものです、じゃあ確かに渡しましたから」
「え?」
思わず受け取ってしまった二つ折りの紙。店員は小走りで店の中に消えていく。
「あ、違う……」
あの店員勘違いしている。俺は学校帰り以外ここで買い物した事はないのだから。
でも気になってその紙を開いてみると。
「…………、これ…………」
一枚の切手が中央の切目が入ったところに差し込んである。
見た事のある、懐かしい切手…。
▽
「はあ、はあ、はあ……っ、はあ、はあ…」
久しぶりに体育以外で走った。階段まで駆け上がって、普段の自分にはない行動だ。
クローゼットを開け、暫く開ける事のなかった飴色に変色しきった段ボールを引きずりだす。
粘着力を失ったガムテープは簡単に剥がれ、中身が久しぶりに顔を出した。
「…………」
段ボールの奥底から出てきた一枚のカード。
恐る恐る開き、そして先程のカードを並べ、そっと合わせてみた。
「………そんな…」
二枚合わさった切手は一枚の絵に変わった。
何の絵なのか今までわからずにいた。
いや、すっかりこんな切手の事など忘れ去っていた。
フランスの消印まで入った、天使が両手を取り合い唇を合わせるその絵……。
消印までが綺麗に繋がった。
「…………」
いつ、誰に貰ったのかもわからない切手。
「………、だって…その時間は…俺はバイトしてる…」
俺は紙を手放しじっといつまでも意味もなく壁を見つめていた。
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