《MUMEI》

ぼんやりとしながら、

それを眺めていたら。




「ぇぃっ。──ほらっ」





いつの間にか、

那加はその花びらを掴まえていた。





「もっと飛んで来ないかな──」




那加は窓辺に立つと、

眩しそうにしながら、

手を目の前に掲げた。





「日向──何ぼんやりしてるの?」

「ぇ、ぁ‥悪い」

「ねぇ、日向もこっち来て」

「俺も‥?」

「いいから早く」

「───────」





言われるがまま、

那加の隣りに立つ。





「──ぁ」





この窓からは、

あの桜がよく見える。





すっかり、

忘れてたけど──。

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