《MUMEI》 S夜月は光の表情を覗き見て楽しんでいる。 「光。話す気になったか?」 光はすました顔で唇を強く結んだ。明枝の名前だけは絶対に言えない。 また本村がはしゃぐ。 「夜月さん。スマートな拷問なら低周波マッサージですよ」 「なるほど低周波マッサージか」 夜月はとぼけた顔で光を見た。 「光。低周波マッサージでいじめていい?」 質問がくだらな過ぎる。光はムッとした顔で無視した。 「光の敏感なところをじわりじわりと攻めて、徐々に快感が高まるんだ。悔しくてたまんないよ」 さすがに光は怒りが湧いてきた。夜月は両手で光の顔を包む。 「何その顔は?」 光は首を振った。しかし夜月がしつこい。嫌がっているのを知ってなおも両手で顔を包む。 光は思いきり首を振ってやめさせた。 すると、夜月はいきなり歩いて光の正面から凄んだ。 「光。何かなその態度は?」 光は慌てた。夜月を怒らせてしまったか。 「何生意気な態度取ってるわけ?」 夜月は光の顎を指で掴むとグイと上向かせた。 「あっ…」 「そんなに裸を晒したいか?」 バスタオルを掴まれた。光は本気で焦った。夜月を直視する。 「何だその顔は?」 自分がどういう顔をしているかわからない。黙っていたら誤解される。 「顔って?」 「舐めてる?」 「舐めてません」 「舐めてる?」 「舐めてません」 夜月は手を離した。 「わかればいいんだよ」 本村は大袈裟にこけた。 「それだけで許しちゃうんですか?」 「反省したら酷い仕打ちはしないよ」夜月が笑った。 「もしかして低周波マッサージもなしですか?」 「当たり前じゃん」 「夜月さん」小野寺も呆れた。 夜月はまた光の枕もとに回ると、笑顔で言った。 「光。小野寺と本村に光の身を任せてもいい?」 光は心底夜月を軽蔑した。最低の男だ。体を弄ぶのも罪は重いが、心を弄ぶのは最低だ。 本村が調子に乗る。 「夜月さん。斬新じゃないけど、やっぱり電マですかね?」 光の表情が動いた。 「電マかあ。あれ、その焦り顔は、電マ知ってんの?」 光は横を向いた。 「知りません」 「嘘だね。知ってんだろ電マの威力?」 「知りません」 しかし夜月は本当にしつこい。 「教えな。何で知ってんの?」 小野寺が口を挟む。 「夜月さん。合い言葉をだれに聞いたかを吐かすんですよ」 夜月は笑った。 「そうだった。光、だれから聞いた。言わないと電マでいじめるよ」 光は困った。これ以上無言ではいられない。そこへ本村が電マを出してきた。 「光チャンはかわいいから最強ね」 いきなり最強レベルにした。ウイーンと凄い音が部屋中に響く。 本村は光の内股に先端を当てた。 「ちょっと!」 光は本村を睨んだ。しかしやめてくれない。夜月も止めようとしない。 光はもがいた。 「夜月さん。あそこを攻めてもいいですか?」 「そういうことは本人に聞かなきゃ」 光は思った。こんなSは聞いたこともない。しおらしくしていても卑劣なことをされるなら、罵倒してしまおうか。 そう考えたとき、夜月が叫んだ。 「わかった。明枝に聞いたんだろ?」 「え?」 光は心臓が止まりそうだ。 「明枝から聞いたんだろう。電マの威力?」 「へ?」 本村は転がった。小野寺が怒る。 「夜月さん遊び過ぎですよ」 ところが夜月は二人を無視して質問を繰り返した。 「明枝から聞いたの?」 「あ、はい」 光が正直に答えた。夜月は感激の笑顔だ。 「明枝、なんか言ってた?」 「あ、凄く悔しかったって」 「嘘。そんなこと言ってた?」 「はい」 「そうか。俺もやり過ぎたと反省はしてるんだ」 本村が電マを持って聞いた。 「夜月さん、電マは?」 「君は野蛮人か。しまいなさいそんな凶器は」 「はあっ?」声が高い。 「光がやっと答えてくれたんだ。嬉しいじゃないか。はっはっは!」 光はまた唇を真一文字に強く結んで、油断なく構えた。 前へ |次へ |
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