《MUMEI》
屈辱的拷問
一方、完練英雄は。
両者拳を構えて睨み合っていた。完練は目尻と口から出血。男も顔が腫れている。
激しい乱打戦だ。
男が来る。構わずガードの上から右ジャブ、左ストレート、右フック、左アッパーと止まらない。
完練もボディにフロントキック。男が足を掴んだ瞬間に右ジャブ顔面!
男は後ろに飛んだ。完練は笑顔で指を差す。
「やるね」
男が来る。凄い重圧で完練を壁に追いやると左ミドルキック。入った。完練のガードが下がった瞬間に左アッパーが顎に炸裂。
ガクッと崩れた完練の鼻に右ストレート。たまらず組みつく完練をぶん投げると上に乗り、男は猛烈なパンチの雨を降らせた。
「テメー調子に乗るな!」
完練は男の両手首を掴んでパンチを打たせない。力比べ。
完練は思いきりブリッジ。男の体が一瞬浮いた。完練は体を起こして顔面に頭突き!
両者離れる。息遣いが荒い。
一方、光は。
小野寺が夜月に言った。
「夜月さん。俺に拷問させてください。こんな小娘、速攻で吐かせますよ」
光は夜月を頼りにするのは悔しかったが、夜月の悪趣味なゲームのために、無傷なことも事実だった。複雑な心境は光の表情にも表れていた。
「小野寺は乱暴だし、本村は容赦ないからな」
「乱暴されたくないから吐くんじゃないんですかあ」
「なるほど」
笑顔の夜月は、光に聞いた。
「光。小野寺と本村のドSコンビにバトンタッチしてもいい?」
光は答えない。本村が笑った。
「よく言いますよ。夜月さんを入れてドSトリオでしょ」
「俺は君たちみたいな野蛮人とは違うよ」
軽口を交わしているので、夜月は黒サングラスの三人組が背後に回ったことに気づかなかった。
いきなり夜月をロープで縛る。
「おい、何すんだ!」
あっという間に夜月を縛り、押さえてしまった。
「バカ、ほどけ!」
小野寺が答える。
「夜月さんはそこで見ていてください」
「残酷なことはやめろよ」
「残酷なことをされたくないなら、吐けばいいんですよ」
光は身じろぎした。小野寺と本村が光に歩み寄る。怖過ぎる。
小野寺は上から凄んだ。
「おい、俺は夜月さんみたいに甘くないからな」
光は慌てた表情で小野寺を直視した。
「だれから聞いた。正直に答えたら痛い目には遭わさないよ」
「飴と鞭ですね」本村が笑う。
光は、黙っているわけにはいかない。
「あたしは、何も聞かされてなくて」
「そういうとぼけたこと言うとねえ、こういう意地悪しちゃうよ」
小野寺が脇をくすぐる。
「やあ、ちょっと、やめ、きゃははははは、やめ…」
敵に笑わされるなんて、悔しくてたまらない。しかし小野寺は脇腹や脇の下を上下してくすぐりまくる。
光は真っ赤な顔をして悶えた。
さらに本村は足の裏をくすぐった。
「やははは、悔しい!」
泣いた。それでもやめない。鬼だ。光はどうにもならず折れた。
「やめて、やめて!」
初めて哀願させた。小野寺は屈辱にまみれる光の顔を覗き込んだ。
「さあ吐け。やめてってことは降参だろ。ここで言わなかったら次は1時間くすぐり続けちゃうよ」
「やめてください、そんなことしたら死んじゃう」
「だったら言いな」
光は汗びっしょりだ。
「あたしは、間接的に聞かされただけで…きゃははははは、やめて、やははははは」
光は暴れた。
「言います、息できない…」
それでもやめない。光は涙を流して悶えた。
(完練さん助けて…)
その完練は、劣勢に立たされていた。
男が猛烈な左右のフックからボディに膝蹴り。かがんだところを右フック。たまらず組みつく完練。男は自ら後ろに倒れて引き込んだ。
完練は上からパンチを打とうとしたが、腕を取られた。
「しまった!」
三角締め。完練は必死に防御する。肘が伸びたら終わりだ。
一方、光は。
「やめて、やめて!」
哀願するのは屈辱だがくすぐりには耐えられない。
「やめてください、お願いですから」

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