《MUMEI》
一撃必殺!
夜月はサングラス三人組に言った。
「邪魔しないからほどけ」
三人組は顔を見合わせたが、あっさりほどいた。
光は容赦ないくすぐり拷問に、涙を流して哀願した。
「やめて、やめてください!」
「言うか?」
「言います」
ようやくやめてくれた。光は汗びっしょりで、打ちのめされたようにぐったりした。
「ここで喋んなかったら裸にしてくすぐるぞ」
小野寺がバスタオルを掴む。光は慌てた。
「待って!」
「じゃあ話せ」
光は文句を言った。
「さっきも話そうとしたのに、あなたが途中でくすぐったんでしょ」
「時間稼ぎするなら取るぞ」
小野寺がバスタオルを持ち上げた。
「わかった、やめて!」
タオルはすぐに戻された。観念するしかないのか。光は乱れた息を整えた。
完練英雄は。
渾身の力で男を持ち上げた。それでも技を解かない。完練は床に男の背中を叩きつけた。
「まさか?」
それでも技を外さない。完練の顔が真っ赤だ。腕も痺れる。
(そうだ。総合格闘技になくて、プロレスにあるもの。プロレス的発想は…)
完練は再び高々と持ち上げた。今度は床ではなく膝を立ててそこに男の背中を叩きつけた!
「があああ!」
離れた。チャンスだ。男が起き上がろうとするところを低空飛行のジャンピングニーパット顔面!
決まった。
ダウン。男は何とか起き上がる。片膝をついた。苦しそうだ。
完練は助走をつけて男の膝の上に飛び乗り、側頭部に膝…シャイニングウィーザード!
光は口を開いた。
「最初に聞いていいですか?」
「時間稼ぎか?」
「違います、違います。正直に話したら、あたしはどうなるんですか?」
「まあ、すぐに解放はできないな」
「身の安全は保障してくれるんですか?」
「時間稼ぎ決定」
小野寺がバスタオルを乱暴に掴んだ。光はもがいた。
「わかった、言います、言います!」
バン!
ドアが開いた。
「完練さん…」
光が顔を紅潮させた。夜月は驚く。
「完練?」
光が裸で手足を縛られている。完練の怒りの火柱は天井を突き破った。
「貴様らあ」
完練の殺意に満ちた目を見て、夜月は笑顔で言った。
「安心したまえ完練君。彼女は無事だ。一度もバスタオルは取られてないし、もちろん乙女の純情も守られている。過去のことは知らんがね。カンラ、カンラ」
完練は夜月を睨んだ。
「オレに殺されないための逃げ道をつくったか?」
「何?」小野寺が出た。
「よせ小野寺。あの用心棒を全員倒した男だぞ」
「やってみなきゃわからない。俺だってボクシングやってたんだ」
小野寺は両拳を構えると、完練に向かう。完練は構えない。小野寺は怒った。
「舐めんな!」
圏内に入った瞬間に左ジャブ!
「がっ…」
小野寺は尻餅をついた。立てない。
「小野寺さん!」
「チッキショ…」
三人組が動く。夜月が腕で制した。
「やめろ、やめろ」
本村が小野寺に肩を貸す。夜月は笑顔で言った。
「君に素手で勝つのは難しいが、君から逃げるのは簡単だよ」
「なぜだ?」
「君はまず愛しの光をほどくだろう。その間に逃げればいい」
光が言った。
「完練さん、あたしのことは構わなくていいから、こいつを捕まえて」
「それはどうかな?」
夜月は、光の体に掛けられているバスタオルを取ってしまった。
「きゃあああ!」
「ご機嫌よう!」
「貴様!」
夜月たちは逃走。光は真っ赤な顔で叫んだ。
「いやあああ!」
急いで駆け寄った完練は、落ちたバスタオルを光の体に掛けた。
「悔しい!」
「大丈夫。見てないから」
「あいつらに見られた。悔しい!」
完練は手足をほどいた。光が抱きつく。
「何やってたの、遅過ぎるよう」
「ごめん」
「凄く怖かったんだからあ」
「ごめん」
光は完練の顔の傷に気づいた。
「あ、大丈夫?」
「大したことはない」
「ごめんなさい、あたし、自分のことばっかり」
「……」
二人は抱き合った。

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