《MUMEI》

「なかなか肝の座ったお兄さんだ。俺たちのメンバーに歓迎しますよ」
 顔にうっすら笑みを留めて高下が言う。
「なんだよ、やけにあっさりなんだな」
「ええ。実はさっきお二人があの頭の悪そうな双子を殺したところを見てました」
「そうか、さっきの音は」
高下はニンマリ笑う。
「あいつらには俺のグループメンバーも何人か殺られましてね。
しかし、なかなかすばしっこい奴らで。俺たちが追ってるうちに、お二人が、ね」
高下は手で銃の形を作り、撃つ真似をした。
「つまり、俺たちがお前らの手間を省いたってわけだ」
「ええ。少しお手伝いをさせてもらいましたが」
「で、わたしたちがなんで、あんたたちの仲間になんなきゃならないわけ?」
いつになく、ユキナが強気だ。
「別に、嫌ならいいですよ」
「はあ?」
これまたやけにあっさり引き下がる。
何を考えているのかわからない。

「そ、そう。じゃあ、わたしたちはもう行くし」
「そうですか、それは残念」
まったく表情を変えず、彼は言った。
 その様子にユウゴは違和感を覚える。
しかし、ユキナは一刻も早くその場を離れたいのか、ユウゴの腕を取って歩き出した。

 高下とその仲間たちは、無表情のまま二人を見つめている。
まるで、なにかを待っているかのように。

「ちょ、待て。ユキナ。なんか、変だ」
しかし、ユキナは力任せにグイグイとユウゴを引っ張って進んで行く。

 そんな二人が高下たちの作った輪を出た瞬間、彼らの表情が一変した。
「出た」
「ああ、出たな」
「出た、輪から出た」
「出たぞ!」
口々に「出た」と繰り返す彼らが、バッと高下の顔を見る。
「な、なに?」
 さすがに、この異様な雰囲気に気付いたユキナが不安そうに彼らを振り返る。
「だから、待てって言ったのに」
ユウゴが小声で言った。

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