《MUMEI》 「はい、1つでいいんで──」 「いいわよ、ちょっと待ってね」 佳代子さんは、 すぐにグラスを渡してくれた。 「他には何かいる物ある?」 「ぁ、ぃぇ──大丈夫です。ありがとうございましたっ」 「ふふ、どう致しまして」 佳代子さんの声を背中に受けながら、 那加の病室に急ぐ。 エレベーターで、 3階へ。 そして307号室の戸を、 引いた。 「もぉっ、どこ行ってたのよ心配したんだからっ」 入るなり、 那加が仁王立ちで待ち構えていた。 前へ |次へ |
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