《MUMEI》

「どこ行ってたのよ」

「ぇ、ちょっと道具を取りに‥」

「道具‥? 何よ道具って」

「ぃゃ、だから‥、そこ座ってくれマスか姫サマ‥」

「何やってくれるの?」

「っと──‥こ、このグラスに‥」

「コインがグラスを突き抜けるって手品でしょ? そんなのつまんない」





速攻で見破って、

那加はそっぽを向いた。





「面白い事やってって言ったのに、全然じゃない」





言いたい放題の姫サマ‥。





どうする、

俺‥。





「──那加」

「ぇ」

「ここに、水が入ったグラスがあります。これを頭の上で傾けたら‥」

「零れるに決まってるじゃない」

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