《MUMEI》
時間
ビクターは、いろんなことを教えてくれた。

僕とビクターは、買い物の帰りに事故にあったこと。いきなり突っ込んできた車に、はねられたこと。
奇跡的に、ビクターはかすり傷ですんだこと。
逆に、僕は丸一日昏睡状態だったこと。


「よかった・・・。」


ビクターはそう言って、微笑んだ。
なんだか、くすぐったくて目をふせる。
と、視界の隅に、さっきの薔薇が映った。


「あの薔薇・・・ビクターがいけたの?」


指差すと、彼は優しく首を振る。


「それは・・・」
「ディビット!?」


大声とともに、病室におんなが転がりこんできた。
その髪は、僕と同じ金色。

「ああ、よかった!どんなに心配したか・・・。ね、痛いところ、ない?」
「・・・リリア。そんなにいっきに話したら、ディビットが話せないだろう?」

ビクターが、笑いながら女の手を取る。


リリア姉さん。
僕の大好きな、姉さん。
そして、ビクターの素敵な婚約者。

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