《MUMEI》
僕が引っ越してきた家には…
午前10時23分…

僕は今、新しく引っ越す家…というか、アパートに車で向かっている。



助手席が僕で運転席が父さん。後ろの席には、母さんと姉ちゃんが座っている…。


なかなか面白い配置だと思う。 普通、親が前で子供が後ろなんじゃないの? あれっ?違う!?

とか、どうでもいい事を
悶々と考えている間も
車内は、誰一人として喋らない…。




「「「「……………。」」」」


沈黙が痛いのは、
僕だけだろうか…。




チラッと目だけでバックミラーを見ると、何時もの倍笑顔の姉ちゃん…。

逆にそれが恐い。



「さ、さぁ〜て。もう直ぐで新しい我が家に着くぞ!!楽しみだなぁ!」
沈黙に耐えきれず父さんが一番に喋った。

「そぅね。今日からボロアパートが私達の家ね」

「ボ、ボロアパートなんかじゃないぞ小百合!パパは、あの年期が入って落ち着いた佇まいが気に入ってあのアパートにしたんだ!」

「何言ってるのよ、あなたが働いてた工場が倒産したもんだから泣く泣く家を手放して、家賃のやっっすいあのボロアパート借りたんだろぅが。ジャングルに帰れよ」

「ママァァァ!!最後の台詞酷くない!?言い過ぎじゃない!?」

「日本語喋れよプー太郎」

「小百合−−ー!??」




そう、僕らが引っ越しをする原因は、父さんの職無し。しかし、今の父さんをせめたりできない…。だって今の父さん……
イジメられてるの●太にしか見えないんだもん。

仕方ない…後でメソメソ泣かれるのもウザいから(←酷ッ)僕がフォローしてあげよう。

「2人共、あんまり父さんイジメるなよ。そりゃあアパートに引っ越さなきゃならなくなったのは、99%父さんのせいだけど、父さんだって毎日同情するほど必死で生きてんだからさ!」
いゃ〜完璧だね僕
正義のヒーローになった気分。





「…もう、父さん立ち直れない……」




…あれ?

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