《MUMEI》
髪飾り
ビクターは、小さな雑貨屋の前で車を停めた。
チリチリと、可愛らしい鈴の音がして、扉が開く。
中では、オルゴールがかかっていた。


「・・・ビクター、こんな店、知ってたんだ。」
「意外か?・・・学生時代に、見つけたんだ。いい店だろ?」


綺麗な、ガラス細工の小人たち。木でできた、猫のしっぽ。


「・・・うん。すごく、すてきだね。」


僕は、こういうアンティークが好きだ。
ワクワクしてしまう。


「・・・よかった。じゃ、ちょっと待ってて。」


誇らしげに微笑んで、ビクターは店の奥に消えた。
僕は、静かに辺りを眺めた。
すごく綺麗だ。

脆くて儚い、キラキラしたものたち。


ふと、小さな髪飾りが目に入る。
赤い薔薇のついた、髪飾り。


姉さんに、似合いそう。


姉さんは、赤い薔薇が好きだから。
手に取ると、堅くて冷たかった。

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