《MUMEI》

先生の提案で、

何でか知らないけど‥

洞窟の中に入る事になった。

「ねぇ、ちょ‥ちょっと待って」

「ん? トンネルになってるみたいだし──別に大丈夫だぞ?」

「あたしが大丈夫じゃないです‥」

「ぇ?」

「‥やっぱり何でもない‥」

せっかく、

こんなに先生が楽しそうなんだもん‥

何か、

断るのも可哀相だし‥。

「どうした?」

「ぁ‥ううん。──ねぇ」

「ん?」

「それ、1本貸して」

「ぁぁ‥いいけど」

先生は、

あたしにオールの片方を差し出した。

「お前も漕いでくれるのか?」

「うん、いっぺんやってみたかったし」

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