《MUMEI》

「んー‥、こっちの方が美味しいかも」




那加は、

一口づつ2種類のプリンを食べてから、

そう呟いた。




「はい、こっちが日向のね」





那加が差し出したのは、

たったさっき、





『こっちの方が美味しいかも』





と言っていた方のプリンだった。





「那加、何でこっちの方──」

「言ったでしょ?」

「ぇ」





「日向のお陰、って」





ニッコリと笑った、

那加。





一瞬、

釘付けになる。





でもすぐに、

那加の声で我に返った。

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