《MUMEI》
罪作りな男
文化祭が近付くと、準備の時間も増えてきて、学校全体のテンションが上がってきていた。


そんな中


「ふぅ…」


反比例して、徐々にテンションが下がる男が、一人。


「そこ! ため息つかないでよね」


志貴に注意される男に、クラス内の誰も同情しなかった。


(自業自得だよな)


もちろん、俺も同情しなかった。


「さっさと吉野に返事しないからだ」

「う〜、だってさ〜」


優柔不断な守は、夏休みが終わっても


『始業式あるし』

『復習テスト、頑張らないと!』

『ぶ、文化祭の準備が…』


吉野と二人で話すのを避け続けていた。


「後夜祭では返事するんだろうな?」

「や、…でも、球技大会も中間テストも修学旅行もあるし…」


逃げ腰な、守に


『逃げるな』という全員の視線が注がれた。


クラス全員が


多分、学校にいるほとんどの人間が、今、吉野の味方だった。


(吉野も必死だな)


それは、いつまでも自分から逃げる守を追い詰める為に、吉野が立てた作戦の成果だった。

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