《MUMEI》
プレゼント
姉さんは、僕の前で寂しそうに俯いた。


「だから・・・私が死んで、デビィが遠慮して、想いを殺してるって知ったとき」


姉さんの声が、震える。


「後悔して、後悔して、後悔して・・・。自分を、呪ったわ。」


姉さんの指は、温かい。
死んでるなんて、嘘みたいだ。


「・・・ビクターは、姉さんを愛してる。」
「・・・あなたによく似た、私をね。」



姉さんの声。姉さんの瞳。大好きな姉さん。


「あなたと、ビクターと、三人で暮らした毎日は、幸せだった。」


「僕もだよ。」


きっと、ビクターも。



姉さんは、緩く頷いて僕を抱き締めた。
ふと、掌の中の堅いものに気付く。

赤い薔薇の髪飾り。

姉さんの髪に、そっとそれをつける。
姉さんは、女神のように綺麗だった。


「ありがとう。」


姉さんが、微笑みながらゆったりと薄れていく。
辺りも、霧がかかったように消えゆく。




頬を、涙がつたうのを感じた。

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