《MUMEI》
休憩時間
 休憩時間、エリナは多田が教室にいないことを確認して小谷に話しかけた。

「なんだよ?」

小谷は授業中、ぐっすり寝入っていたらしく、機嫌が悪い。
額には赤い跡が残っている。

「なんでいきなり多田と仲いいの?」

「ああ?」

「いやだから、前に嫌いだって言ってたじゃん」

「まあな、そうだったんだけど。あいつ、話してみたら意外といい奴でさ」

いい奴?
あいつが?
わからない

その時、教室へ多田が戻ってきた。

「けど、なんでお前がそんなん気にするわけ?」

「いや、別に。あんたがなんで態度が変わったのか、気になっただけ」

「あ、そ」

小谷は興味を失ったのか、再び机に突っ伏して寝始めた。
一方、多田は楽しそうにクラスメイトと笑い合っている。

エリナはその顔を見ながら考えた。

どこが、いい奴なんだろう。
いや、たしかに彼はいい奴だ。
みんなに優しく、誰とでも仲がいい。
それなのに、自分がなぜ、こうまで多田が気に入らないのかわからない。

 エリナは考えるのをやめて席に戻った。
珍しく、前の席にアンナがいない。

そういえば、何か言いかけていたがどこに行ったのだろう。

次の授業にアンナは戻ってこなかった。

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