《MUMEI》 愛は会社を救う(55)多くの会社が、いまだゼネラリスト育成型の人事システムに囚われている。 そこでは、良きにつけ悪しきにつけ"仕事が人に付いて回る"という状況が最も忌み嫌われる。 この支店も同じだった。山下仁美に仕事が付いて回る状況…つまり、彼女への依存症的体質を改善させる必要があった。それにはまず、山下仁美が情報を独占する構造を崩壊させることだ。 そのために私が立てたプラン。それは、社員全員が知っているべき情報を、よりオープンな形で共有するというものだった。 そこで、職場内の潤滑油的役割を担わそうとしたのが藍沢由香里だった。 由香里には、過去の通達文書を手始めに、会議録、人事労務管理システム、財務会計管理システムのマニュアルも読んでもらっていた。 ベテラン社員のウィークポイントであるシステム系の部分も、彼女にサポートしてもらうためだ。 本人の言う通り、その記憶力、吸収力には目を見張るものがあった。 さらに、知っていることは惜しみなく説明してくれる"訊き易さ"が、社内の人間関係をも徐々に円滑化し始めていた。 そして彼女は、私が予想した以上の実力を発揮していった。 前へ |次へ |
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