《MUMEI》

『羽菜!水っ!!』


『はいっ!』


仁先輩が私を“羽菜”と呼ぶようになったのは、部員で一番最後だった…。


もともと、
女子バスケ部にいた私は、身長が低すぎてレギュラーになれず、
補欠ばかりの日々が続いていた…。


そんなある日、
顧問の先生に呼び出された部室で、初めて彼に会ったんだ…。


先生は私に男子バスケ部のマネージャーを勧めた。


いつまでも補欠の私が、
大好きなバスケを続ける道は、もうマネージャーしかなかった…。


紹介された部長の彼は、
無愛想に話し掛けた。


『…宜しくな。』


第一印象は最悪…。


スラッとした長身の彼に、嫉妬さえした…。


でも…


マネージャーになって、
分かったんだ…。


彼が部長なのは、
恵まれた体格のおかげじゃない…。


かげの努力と…


部員への気配り…


そして、誰よりも最後まで練習をしている姿に、私は惹かれていったんだ…。


彼は私に言った…。


『バスケはチームプレー。マネージャーも
チームの一員だってことを忘れるなよ…。』


…って


……すごく嬉しかった。


“一ノ瀬 仁”


彼が
私の初恋の人に
間違いなかった…。

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