《MUMEI》

入学して3ヶ月…


『羽菜っ!食堂行こ!』


『…うん。』


ようやく友達も出来て
学校にも慣れ始めた。


…でも
私は、落ち込んでいた。


何故なら、
あの入学式以来…
仁先輩を
一度も見かけないからだ。


“なんでだろう…?”


他の上級生には
いっぱい会うのに…。


何気なく座った窓際の席…


『あーっっ!!』


私は、テーブルの水を思い切り溢してしまった…。


『どうしたの?羽菜!』


『…ゴメン!ちょっと。』


私は、言い訳もそこそこに走りだした。


“仁先輩…!!”


二階の食堂の窓から、
彼が見えたのだ。


慌てて、彼の後を追う。


…バタンッ!


彼は友人と
“第二研究室”と書かれた部屋へ入っていった…。


静かに扉に耳をあてる。


『仁!
風邪はもういいのかよ?』


『…あぁ〜なんとかな。』


“…風邪?
先輩風邪ひいてたんだ。”


『お前が風邪なんて
本当に珍しいよな〜。』



『あぁ。
何日も家にいるなんて久々だったから暇だったよ。』


『で?ちゃんと寝込んでたのか?…ずっと?』


『そりゃそうだよ。
熱あるし、体ダルくて動かねぇもん。』


『そっか。
そりゃ災難だったな…。』


『…でもな。
寝込んでる間に面白い携帯サイト見つけたんだ。』


『…携帯サイト?』


『あぁ。
色んなゲームしたり、
知らねぇ奴とメールしたり…いい暇つぶしにはなったよ。』


『…ふ〜ん。仁ってそんなのに興味あったんだ。』


『いやっ!
風邪も治ったし、もう止めるつもりだったんだけどなんかハマッちまってな。』


彼と友人の話を
盗み聞きしている
私の姿は…
ストーカー以外の
何者でもなかった…。


その夜…


寮で1人考え込んだ。


今日、聞いた
仁先輩がハマッているという“携帯サイト”…。


友人に詳しく説明していた内容を…。


“仁先輩と近づきたい!”


気持ちばかりが
先走るけど…
正面からぶつかっていく
勇気の無かった私は、
偶然を装い、サイト内で
再会する計画を企てた…。


ごく自然に…


“よしっ”


私は、昼間聞いた携帯サイトへアクセスした…。


ポチッ…!

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