《MUMEI》

客は妾を静かに見た。

《私に選べと?》


妾は頷いた。


『お前の望む毒を
与えよう。』


客はフワリと笑って
答えた。


《では…お前のキス
で殺して欲しい…》


『何?妾のか?』


確かに妾のキスも
猛毒であるが…


《俺は幼き頃より
こんな容姿だ。

誰も近寄らず、触れ
る事も無かった。

最期くらい〜美しい
お前に近寄って触れ
て貰って幸せな気分
になっても良いだろ
う?

でも…お前が嫌なら
ば諦めるが…

所詮…高望みな夢か
もしれぬ…》


客はそう言うと俯い
てしまった。


妾は…愕然と
客を眺めていた。

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