《MUMEI》

…妾と同じ客…


妾もこの毒のせいで


誰にも触れられず…
誰にも近付かれず…


愛した者に…
触れる事も叶わず…


触れれば…
毒に侵され離れ…


妾もいつも…
独りぼっちだった。


《毒…姫…》


妾は〜客の前に
歩み寄った。


『妾のキスでお前を
幸せに逝かせるのな
らば喜んでキスしよ
うぞ…』


そして…妾は…

この客…この男に…


最初で最期の…


口づけをした…


男の醜い体がゆっくりと倒れて行く…


《あ…りが…とう

…毒…姫…》



男の目から涙が一筋
流れていた…


妾は…その雫を
小瓶に詰めた。


『お代は戴きました
…幸福の涙…ゆるり
とお眠りなさい。』

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