《MUMEI》
タマ争奪戦
「タマ、会いたかったよ。」

白い学生服に煌めく銀髪、青い瞳、……千守さんだ。


「……用件なら俺に言えばいいだろう。」

千秋様が僕を首輪ごと掴んでぶん投げた。


「……ッ!」

我慢しなきゃ廊下で発毛は出来ない。


「はなちゃんがね、こんな果たし状を送ってくれたんだよ。で、手違いで千秋兄さんの分も紛れていたからタマに会うついでに渡しに来ちゃった。」

極太毛筆の漢らしい文字で『千秋宛』と書かれてある。


「……三校対抗運動会……」

千秋様はその場で受け取った手紙を黙読してゆく。


「そう、この中等部、高等部、大学院で運動会、勝ったら負けた者の要求を飲まなければいけない。
楽しそうでしょう?理事長からの許可も取ったみたいだね。はなちゃんはタマが欲しいんだってさ。」

突然、僕の名前が上がり驚いた。


「俺が勝ったらどうしようかな〜。ね、タマ?」

千守さんと目が合うと反射的に千秋様の後ろに隠れてしまう。


「……茶番だな。」

千秋様は鼻で笑う。


「千秋兄さんは欲しいモノないからって、適当にあしらわないでよ?
俺が勝ってもタマ貰うからね、それくらいの覚悟で挑んでもらわないと楽しめないからね。」

千守さんがそう言い残して帰るので体が強張ってしまった。


「タマ、明日からは朝練だ。」

僕は今まで部活動をしたことがなかったので初めての朝練という響きに感動を覚えた。
千秋様が僕なんかの為に一生懸命になってくださっている……期待に応えるように頑張ります!

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