《MUMEI》 愛は会社を救う(59)「初めてだったんです。仕事をして、褒められたり感謝されたりしたの」 店の一角では、ラフな身なりをした大学生風の男女がコンパに興じていた。 由香里も学生ならば、今頃は会社訪問をしている年齢。 だがすでに社会人として、彼らより着実に一歩先を歩んでいる。 そう考えると、ある種の感慨を禁じえなかった。 「会社の中で何をしたら役に立てるのか、どうやったら足りない所を補えるのか、全部、赤居さんから教えていただきました。だから…」 いつになく熱っぽく語る由香里をいなすように、私はやんわりとこう応えた。 「私は隠されていた情報を開示して、あなたに託しただけです。その情報を活かすことができたのは、全てあなたの判断、あなたのお働きですよ」 私はあくまで由香里の功績を強調した。事実、そう考えていた。 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |