《MUMEI》

「すっごく美味しかったのにな──日向のお料理」

「───────」





こういう時、

何て言葉をかけてやったらいいんだろう‥。





那加はもう、

5年間も普通の食事をしていない。





本当に食べたい物が、

食べられない。





かなり、

辛い事だと思う。





「ひなた」

「?」

「あたしが退院したら──またオムライス作ってくれる?」





軟らかい、

どこか哀愁を帯びた声。





久し振りに聞いた。





那加のこんな声は──‥。





「ねぇ‥?」

「──ぁぁ、作ってやる。お腹壊す位沢山作ってやる」

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