《MUMEI》

「了解──」





暫く、

俺は那加を抱いていた。





我に返ったのは、

ノックがして病室の戸が開いた時だ。





「──那加ちゃん、具合は‥」





言いかけて、

佳代子さんの声が止まる。





と、

同時に。





がばぁっ、

と那加が立ち上がって、

俺を突き放したもんだから‥

危うく壁に頭をぶつけるとこだった。





「か‥勝手に入って来ないでよ‥っ」

「ぁ‥ごめんなさい、具合大丈夫か様子を見に来たんだけど──」

「ぁ‥ぁ‥あたし達何もしてないからっ」

「?」





佳代子さんは、

どうやら気付いていないみたいだった。

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