《MUMEI》 愛は会社を救う(61)城下町支店が営業所に再編されるまで、残り5か月を切った。 社員の中には、残務整理のために土曜出勤する者も多くなっている。 青地知子も次の土曜に出勤すると聞き、私は金曜の帰りに駐車場で待ち合わせをした。 「お話しするの久しぶりね」 前を向いて車を走らせながら、明るい表情でこちらに声を掛ける。カーラジオからは、抑えた音で古い洋楽が流れていた。 引っ詰め髪をやめストレートボブにした知子は、見違えるほどクールな印象に変わっていた。 「素敵ですね、髪型」 「嬉しい。だけど、セクハラかも」 そんな軽口が出るほど、吹っ切れたようにリラックスしている。 「その後、いかがですか。山下さんとは」 「同じです。でも何も言わないけど、赤居さんとのこと、どことなく疑ってるわ。それから…」 「それから?」 前へ |次へ |
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