《MUMEI》
愛は会社を救う(62)
「藍沢のこと、かなり気になってるみたい。あの子のこと見てる時の目で、私にはわかるから」
意外にサバサバとした口調で、知子が状況を分析してみせる。
一方、私のほうは、居酒屋で見た由香里の充実した表情を思い出していた。
「仕事のできる女は全員、自分の前に這いつくばわせたい。…そういうことですか」
そう口にしてしまってから、やや感情に走って失言したことに気付き、慌てて謝罪する。
「失礼…」
「いいんです。実際その通りなんだから」
知子のほうに、あまり気にしている様子はない。
「それに、私は今までの私とは違うもの」
ふと呟いた言葉の真意が、私には完全に理解できないでいた。
初めて男を知ったことで、まだ男を知らない相手に対して、精神的優位に立った。
…そういう意味だろうか。

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