《MUMEI》

「──おや、もう帰って来たのかい?」

「詠子さん、一緒に行こっ」

「千代子ちゃん‥?」

「花火一緒に見に行きましょうよ、ねっ」

「私は‥去年見たから──」

「絶対楽しいですから。ねっ」

「邪魔しちゃ悪いだろう?」

「邪魔じゃなんかないですよ?」

「──そうかい‥?」

「ねっ、シロ」

「ぁぁ」

「だから行きましょっ」

「──ありがとうねぇ」

すっごく嬉しそうに、

詠子さんは笑った。


こんなに嬉しそうな詠子さんの笑顔は、

初めてだった。

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