《MUMEI》
似ている二人
「多田と仲いいんだ?」

 帰り道、エリナはのんびり歩きながら隣のアンナに言った。

「まあね、あいつって誰とでも仲いいじゃん。エリナと同じ」

「あたしと?」

「そう。でしょ?エリナもみんなと仲いいし、優しいし」

そう。それがエリナが昔から自覚している自分。

「多田も同じ。なのに、なんでエリナがあいつを嫌いなのか理解できないんだけど。
多田の方はそうでもないみたいなのに」

エリナは答えなかった。

「それより、何なの?話って」

「え?」

「いやだから、話があるって言ってたじゃん」

「ああ、あれね。もういいや」

「え、いいの?」

「うん。たいしたことじゃないし」

「ふーん。ならいいけど」

会話が途切れた時、アンナの携帯が鳴った。
メールらしい。

「なに?彼氏?」

エリナがふざけて言うと、アンナは複雑な表情で「まあね」と答えた。
そして、無言でメールを読み進める。

やがて、小さくため息をついてアンナは携帯を収めた。

「アンナ?」

「ごめん、あたしちょっと行かなきゃ」

「……そう、分かった。じゃあ、また明日ね」

「うん、また明日」

 アンナは笑顔でそう言うと、駅とは逆方向へと歩いて行った。

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