《MUMEI》

「日向──まだ全部は散らない‥よね?」

「ぇ」

「桜──」

「ぁぁ‥、雨とか風とかがなければ、結構持つと思う」

「じゃあ、また明日も見に連れて来て」

「了解」





今まで、

外には滅多に出たがらなかった那加。





去年までは、

窓から眺めるだけだった桜。





でも今年は、

少し変わった。





那加も、

この桜も。





「ふぁ‥」

「那加?」

「‥眠くなってきた‥」





カクン、

カクン、

と那加は首を揺らしている。





その内、

俺の肩に那加の頭が乗ってきた。

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