《MUMEI》
愛は会社を救う(66)
山下仁美による情報の独占は、もうすぐ完全に破られる。
そのカギは、知子にコピーを頼んでいる、数枚の資料が握っているはずだった。
後は放って置いても、由香里がすべての情報をオープンにしてくれるだろう。
身分の分け隔て無く、献身的に…
もちろん彼女なら、パスワードを盗むような心配もない。
しかし、支店としての業務は残り5か月あるのだ。
今後新たに本社から送られて来る通達は、本当に管理職へ報告されるだろうか。
私はこの間から、ずっとそこに引っ掛かっていた。
不意に、入口の方で微かな物音がした。
急いで起き上がって見ると、ドア下の隙間から一通の角2封筒が差し入れられている。
このマンションでは、日に一度、管理人が郵便物を配達してくれていた。
偽名を使っているが、差出人はKだ。
「来たか」
それは、資料室にある全てのファイルを探しても見つからなかった、ある人物の個人情報だった。

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