《MUMEI》
「全く裕斗はしょうがねー奴だなー…」
「ひで………、ン…、………」
秀幸は俺の隣に座ったと同時に唇を重ねてきた。
いつもの煙草臭い息、
混じり合うコーヒーの香り。
慣れた硬さの舌、
動き
唾液の味
歯茎の…なぞり方
俺のされたい、動き……。
「ひと、来たら!アッ!」
「人なんか構ってられっか!」
ソファにぐっと押し倒されまた唇が重なる。
気持ちいい…
やっぱり秀幸が好き……
こんなにも幸福になれるキスを
俺は……
手放すのか?
「秀幸っ!ひでゆきぃ!ッ……」
秀幸に腕を回して、きつくしがみつく。
「こんなに俺でいっぱいの状態じゃな、…加藤君の事かえって不幸にするだけだぞ?」
「……秀幸」
何もかも見透かしたように、俺を包み込む笑顔を落とした後、ふとそれを真剣な色に変え、
秀幸は瞼を閉じ再び唇を合わせてきた。
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