《MUMEI》
ルナ
bluegrayの色調に彩られた光りが差し込み、思わず瞳をそむけた。頭の中にゼリー状の液体が、私をまだ現実に戻してくれそうもない。それでもぼやけた輪郭の中でなんとか理解しようとする。
 
 此処はどこ?今何時頃なのかな?

 コポコポと音を立てる温かみのある水の中で鮮やかなブルーフィッシュが優雅に斜め横断する。コンクリートの箱に無機質な時間のair pocket。エメラルドグリーンの神秘な世界。現実から見放されたこの空間に、もうどれだけ居るのだろうか。

 ドクンと腕から伝わる鼓動が私を目覚めさせた。おもむろに床に転がったナイフ。白いタオルにこびりついた紅い血液。

 私、リスカしたんだわ…

 次第に透明なゼリーが体内に溶け込む。どうやら覚醒は始まったみたい。
 フローリングには携帯電話、煙草の残骸、散らかったポケットティッシュ、熱帯魚の水槽が、ぼんやり部屋を照らし出している。
 エアコンはついているのに息が詰まるとでも思ったのだろうか、窓が少しだけ開いて照明を包み込むシースルーなベルベットラインをかすかに揺らしている。

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